学校給食と子どもたちへの食育を応援する

中国貴州省興義市に栄養教諭2名を派遣しました。

2019年12月 中国貴州省興義市の学校給食を視察

当会活動の一つとして、海外からの日本の学校給食の視察受け入れと日本の給食制度や学校給食関係者がもつノウハウを海外に伝えるなどの取組を行っています。

今年度は、2019年12月8日~10日の3日間、公募によって選定した栄養教諭2名(中津井貴子先生と平野郁代先生)と、引率者として国際委員会3名を、中国貴州省興義市に派遣しました。また、自費参加の田中理事長、当会の法人会員である(株)サラヤより3名、中国で学校給食の研究をしている通訳の総勢10名での視察となりました。

初日は、中国貴州省興義市の学校給食の関係者と中日交流会。二日目には興義市にて1日20万食を提供する大規模給食会社見学と少数民族生徒が通う中学校の寄宿舎の夕食(給食)の視察を行いました。

 

12月9日 中国貴州省興義市にて中日学校給食交流会

 

 

中国の疾病や傷害の防止と管理により、健康と生活の質の向上を図っている中国疾病予防管理センター(CDC) の主任である張倩先生の講演では、中国の子供たちの健康課題、都市部と農村貧困地域の児童生徒との違いや学校給食の現状、今後の政策、また、今までの取組成果と課題について説明か行なわれました。

続いて田中理事長は、日本学校給食の目標が『食育の推進』であることを始めとして、歴史・制度・食中毒防止対策等について講演しました。

 

左が張倩主任と田中代表、右は通訳の張磊さん。 久しぶりの再会に喜び合いました。
左が張倩主任と田中代表、右は通訳の張磊さん

張倩主任と田中代表は、H24年に北京で開催された、CDCとWFP(国連)の会議以来交流があり、5年ぶりに再会しました。

左上の写真の王興員氏は、貧困から抜け出す方法について、『食の安全は社会問題である。教育の質と給食の質を向上させるのは同じレベルである。地場産物の使用は食の安全と貧困からの脱出にもつながる』と発表しました。

右上の写真の飲食衛生管理局 張磊氏(通訳と同姓同名)は、食材や作業の状態を定期的にチェックしています。チェック方法は給食室や食堂にビデオカメラを設置して行っているとのこと。また、調理員には、テスト問題を出し研修も行っています。

 

中津井栄養教諭と平野栄養教諭による食育授業の実践です。

中津井栄養教諭は、導入で、紙芝居の「3匹のおみまい」を読みました。参加者の食品カードを持ち、紙芝居でお見舞いに持参した食べものを赤・黄・緑の3色群に分けた所に貼りました。

平野栄養教諭

平野栄養教諭は、野菜の花を当てるクイズをし、口にする食物への関心を高める授業の紹介をしました。

 

12月9日 一日20万食提供の世紀陽光給食会社を訪問

世紀陽光総経理王雪安氏と田中代表

写真左の王雪安氏は、2015年4月に貴州省に給食会社を設立しました。現在4施設を経営し、211校に11万食の学校給食を提供しています。

貴州省の興義市は山間部に複数の少数民族が生活しており、児童生徒は通学が困難なために寄宿舎生活をしています。そのため世紀陽光では、朝食や夕食も提供しています。朝食・昼食・夕食を合わせると20万食になるそうです。

世紀陽光の理念は、『①お腹一杯食べられるようにする。②栄養のバランスの良い給食にする。子どもの健康につながるようにする。』です。

王雪安氏は、2018年10月に日本に来日し、田中代表の案内で日本の学校給食を見学し感銘を受けたそうです。また、2020年2月にも来日の予定です。日本の最新の施設を見学し、今度、建設予定の給食会社に生かしていきたいと話していました。

世紀陽光給食会社

世紀陽光では近隣の母親を調理作業員として雇用しています。彼女らは自身の子どもたちが食べる給食であるため、愛情をたっぷりそそいで作ります。給食センターが出来たことで、調理作業員の生活水準がアップし、また食材を提供する近隣農家への経済支援にもなるため、地域の貧困問題の解消にも貢献しています。

《午前の作業》

《午後の作業》

 

12月10日 興義市少数民族の生徒が学ぶ中学校を訪問

中国では、特に、農村部の貧困地域に対する学校給食の充実に国家予算を投入し力を注いでいます。貴州省には貧困家庭が多く、山間部には複数の少数民族の居住地があるため、生徒は寄宿舎生活をしており、その夕飯の給食を視察しました。

遠方からの少数民族が集う地区ため、先生や生徒の寄宿舎も校庭を囲むように建設されている

 

朝・昼・夜・食共に、校内で調理されています。給食の材料も調理員も世紀陽光から提供・派遣されています。

夕飯の調理がちょうど終わり、生徒たちに提供されるところを視察させていただきました。

 

 

午前中に見学した給食調理場の残菜の多さに疑問をもっていましたが、ここでは大き目の一つの器にてんこ盛りにしてたべる生徒たちの姿が目立ちました。寄宿舎生活のため家に帰ることができず、給食をしっかり食べておかないと次の朝まで空腹になるのではないかと思いました。給食用のお皿も決められていないようで、生徒それぞれ自分のお椀を使っていました。

寄宿舎は8人部屋で暖房もお湯も出ない中、生徒たちは元気に暮らしていました。

今回の視察では、特に貧困地域の学校給食がどのように提供されているかを調査しました。興義市では政府の補助金4元を使って、主菜、副菜、汁物が提供されていました。

更に中国政府は100食に1名の調理員の人件費を補助しており、貧困児童生徒に対する栄養補給の取組が着実に充実・拡大していると感じました。