学校給食と子どもたちへの食育を応援する

台湾の学校給食・教育事情視察を行いました。

2018年12月3日~5日の3日間、公募によって選定した栄養教諭2名、引率者として国際委員会2名を台湾の台北市、新北市に派遣しました。また、自費参加の田中理事長をはじめ、栄養教諭OB等の会員5名が同行し、総勢9名で有意義な視察を行いました。

アテンドして下さったのは、9月に来日した宮保王の執行福総経理(副社長)高嘉鴻さんとMIZUNOGI有限会社の総経理(社長)李偉銘(Allen)、そして台湾サラヤの稲津総経理で、大変お世話になりました。

12月3日(月)は新北市汐止區秀峰國小学校を訪問しました。

秀峰國小学校には小学生70クラスと幼稚園児4クラスの2926名が在学しています。

台湾において栄養士の配置基準は、40クラス以上の学校に1名。40クラスに満たない学校は教員が学校給食の管理を行っています。この学校には栄養士一名が、態湾全体で475名の栄養士が配置されています。

<台湾の学校給食の歴史及び実施率>

1973年政府が正式に学校給食実施方針を出した

1995年の実施率は61.87%

2002年に学校衛生法制定(学校給食法は制定されていない)。

2008年の実施率は61%;自校1665所、公設民営42か所 計2088所

 

給食費は全額自己負担で新北市の場合は53元(212円)の中に食材費はもちろん、人件費、光熱水費等が含まれています。
人件費を節約するために野菜は皮むき済、切裁されたものが納入され、食器洗浄の人手を省くため、食器は家庭から持参することになっています。
保護者の安全性に関する要望が高いために、トレサビリティを重視し、給食に使用した食材を毎日登録・公開しています。

新北市の栄養士

給食時間に教室 を訪問しましたが、児童は、ステンレスの丼とスープ用のカップ、スプーンを家庭から持参していました。
張校長先生に校内を案内していただきました。庭には実のなる木や野菜などが植えてあり、食育に力を入れていることが窺えました。

午後からは大享兵食育協会を訪問し、意見交換しました

台湾で銀行などを経営している富邦財団が基金を出し台湾の学校給食を支援しています。

 

12月4日(火)は民設民営の統鮮美食股份有限公司(北部最大の民間給食工場)を訪問しました。

86000食の処理能力をもち、現在、中学校40校、小学校8校 40000食を調理しています。
職員数は185名(栄養士9名、調理師14名、食品製造等162名)、3年前に改築されたので、野菜洗浄機や肉に味をしみ込ませる最新の機械が整備され、理化学検査を行う検査室も整備されています。場内は清潔に使用されていました。

次に受配校である新北市板橋區江翠国民小学校を訪問しました。

大きな学校は、2つの業者から給食をとるシステムのため、献立表を見てクラスごとにどちらの業者の給食を選択するのかを決めるのだそうです。
配膳の状況は、盛り残しが多く、スープは飲みたい児童のみ配食されるので、残食がとても多く、更なる給食指導が必要だと感じました。
全ての児童が同じ給食を食べるのではなく、お弁当持参やモスバーガーを自慢気に食べている児童がいて、制度の充実が求められると思いました。

午後からは教育省教育部國民及學前教育署を訪問しました。

學校衛生科の邱科長、推動学校午餐専案辨公室の盛教授が対応して下さいました。
少子高齢化が進み、台湾全国で、50人以下の学校が200校あります。台湾の学校給食費は100%保護者負担であり、少子化、過疎化で学校給食が経営難に陥っているそうです。
実施率を高め、より良い給食を提供するために「学校給食法を制定してはいかがですか?」と質問したところ、「他の衛生部局、農政部局などとの調整があり、なかなか難しい。」と回答がありました。新北市の栄養士から「私たちが頑張っていることを教育省に伝えてほしい」と頼まれていたので、そのことは、しつかりをお伝えしました。

12月5日(水)台北市立育成高級中学を訪問しました。

在校生は2000人ですが、超肥満14%、肥満傾向15%、痩身13%、普通58%と肥満が多いのに驚きました。
朝食300名、昼食600名が学食を利用していますが、学食の経営を健全化するためには、生徒の利用率を高める必要があり、食堂の環境整備に取り組んでいました。
給食費は一般食55元(220円)、特別食や麺の給食は80元(320円)ですが、特別食や麺を選択する生徒はかなり多く、山盛りにして、美味しそうに食べている生徒が多数いまし た。
こんな、立派な食堂があり、野菜たっぷりの給食が用意されているのですから、多くの生徒が利用してほしいと思いました。

午後からは学校給食台日交流会を開催していただきました。

100名ほどの参加があり、日本の学校給食の説明と栄養教諭による食に関する指導の実演の後、熱心に意見交換が行われました。
Q:台湾では魚が高い、骨があると言うので給食に使われないが、日本ではどのくらい使うのか?
Q:ノロウイルスの場合、食中毒か感染症かを判断するのはどのようにするのか?
Q:勤務年数によって栄養教諭になれるのか?

 

まとめ

台湾の学校給食はレベルが高いと聞いており、かねがね台湾の給食を視察したいと思っていました。
台湾の料理はとても薄味で、野菜が多く使われており、減塩が課題の我々としては学ぶところは大きいと思いました。しかし、学校給食法が制定されておらず、全額保護者負担で運営しているため、学校給食関係者の努力だけでは乗り越えられないものを多く感じました。
人件費や光熱水を抑えるために、食器の洗浄を行わない、食材費を低く抑えるために牛乳は週に一度しか付けられず、カルシウムの摂取が難しい、配膳指導が徹底されていないためにたくさんの盛り残しが出る、栄養士の配置が少なく、教員が代行しているなど、多くの課題があります。

しかし、学校給食従事者は日本と同様、子どもたちのために、ひたむきに努力しています。
日本の学校給食制度が世界一と評価されるのは、学校給食法に設置者(市町村等)の責任が謳われていることが、とても大きいことを改めて気づかされた視察でした。
高さん、アレンさん、台湾サラヤさんはじめお世話になった台湾の皆様に心から感謝いたします。「謝謝!!」