学校給食と子どもたちへの食育を応援する

チーム学校給食&食育ニュース No.5

2021年度は、新型コロナウイルスのオミクロン株により、感染者が激増し、リモートによる研修会や会議が定着しました。当法人も理事会はリモート、2019,2020年度の総会は書面決議、2021年度はWeb開催を余儀なくされております。

しかし、「子どもたちの食の自立のための料理教室(わくわく炊飯器クッキング」は、会員のご努力により、山口県で8回、熊本県で2回実施することが出来ました。また、料理動画「おいらのキッチン」も定期的に配信するなど、子どもたちの食の自立に向けた取組は充実してきております。子どもたちが自身の体を自身の手で賄う力を身に付けることは究極の食育であり、生きる力になります。

以下、2021年度の活動内容をお知らせします。

1 「わくわく炊飯器クッキング」

この料理教室は、幼い子どもたちが、保護者の留守中に料理をするため、火事を起こさないように炊飯器を使用し、また、怪我防止の観点から包丁は使わず、ハサミを使用するなど、安全面に配慮しています。併せて、できるだけ家庭にある食材や調味料を使用するよう工夫し、金銭面での負担にならないように努めています。

 熊本県シンママの会は、シングルママを応援するために支援物資を送っている「シンママ応援団」と連携しています。支援物資を詰めた「幸せBOX」の詰め込み作業に集まってくるママに同行してきた子どもたちを対象として「ママを元気にする料理教室」を行っています。 令和2年度は新型コロナウイルスの影響で実施できませんでしたが、令和3年度は、「ぜひ料理教室をやってほしい」というママたちの要望をいただき、体温測定や手指消毒、マスク着用、出来上がった料理は持ち帰るという、コロナ対策を徹底した上で実施しました。 参加者は保育園の年長さんから小学校6年生までの子ども延べ15名でした。

 1回目のメニューは、基本献立の復習で、ラップおにぎり、みそ汁ボール、ゆでたまご、ミニトマトとし、お家に持ち帰り、家族で食べることを想定して「塩こぶとしらすのごはん」を追加しました。 子どもたちはお母さんや兄弟の分も作って家に持ち帰ります。「塩こぶとしらすのごはんは、作り方がわかったので、お母さんに作ってあげたいです。」、「久しぶりに、ごはんの炊き方をおさらいして、新しい料理を学んで、家でも作りたいです。」と子どもたちは喜んでくれました。

 2回目はまん延防止等重点措置が解除された1週間後でしたので、「炊飯器で作るバナナケーキ」にしました。 漂ってくる美味しそうな匂いにお腹がぐうぐう鳴ってしまい、食べずに持ち帰る約束なのに、つい味見をしてしまう子どももいました。「知らないレシピだったので、少しわからないことがあって、そこが勉強になりました。」「みんなでバナナケーキを作って楽しかったです。味見をしたときに、とてもおいしかったです。家でも作りたいです。」という子どもの感想に、指導者もお手伝いしてくれた管理栄養士を目指す学生たちも感激しました。一人で料理を作れるようになって、毎日忙しく働いているママを助けてあげて欲しいです。

 山口県柳井市の「多幸会」は、4年目の開催になります。公民館活動と連携して組織的に行っており、今年は8回、参加者は全員小学生で延べ103名が参加しました。コロナ禍でもあり、指導者の家族も含め2週間前から検温を実施、献立は児童が一人で炊飯できることを目的に「さんまごはん、みそ汁ボール」に絞り、ゆで卵とミニトマトは指導者が用意しました。料理は児童が持参した弁当箱に詰め、別室で食べるよう3密防止に努めました。ご飯が炊きあがるのを待っている間に栄養教諭から食育を受ける時間も設定されています。

 また、2021年度は柳井市に近い田布施町家庭教育支援チームの「すこやか教室」とコラボレーションする等、活動が拡大しました。社会教育主事が母親に対する食育を行い、子どもたちへの料理教室は「多幸会」が担当しました。親子で食について学ぶことはとても大切なことです。

 実習後の子どもたちの感想には「みそ汁ボールを作れたのがうれしい。家で作ってみたい」「みそ汁ボールを親に教えてあげたい」「みそ汁ボールという便利なものを知ることができて良かった」など、今年もみそ汁ボールは大人気でした。また、「お家でママと一緒に作りたい」「お家の人に作ってあげたい」など家族への温かい思いも沢山書かれています。指導した栄養教諭達もやってよかったと充実感がいっぱいになります。

※料理教室には、マルコメ株式会社様から「みそ」、理研ビタミン株式会社様から「乾燥わかめとだし」、三島食品株式会社様から「ふりかけ」、東京サラヤ株式会社様から「洗剤と消毒液」、三信化工株式会社様から「カップ」の協賛をいただいています。厚くお礼を申し上げます。

2 動画制作プロジェクトチーム「おいらのキッチン」

 コロナ禍において家にいる時間は料理作りの絶好の機会です。最初は親子で、その内に料理のスキルを身に付けて子どもが一人でも料理をできるようになることを目指しています。月一回4品を録画し、毎週月曜日にYouTube配信しています。2021年度は52品配信するとともに当法人のホームページにもアップしています。

 視聴回数順では、1位じゃがいものお好み焼き309回、2位クレープ114回、3位ココア寒天111回と、チャンネル登録者数を増やし、視聴回数を上げるのが課題です。

おいらのキッチン人気メニュー;1位じゃがいものお好み焼き、2位クレープ、3位ココア寒天

 2022年度は、株式会社町田予防衛生研究所様の管理栄養士・栄養士向けサイト(アクセス数18000回/月)において当法人の活動と「おいらのキッチン」を紹介していただけることになりました。また、大学生のアイディアを取り入れ、TikTok やインスタグラムに簡略版を載せることで、視聴回数が延びることを目指しています。

「簡単、おいしい、失敗が無い、低予算、安全」の料理を提案し、子どもだけではなく、一人暮らしや単身赴任の方にも広く活用していただけるよう編集しています。「チャンネル登録」と併せて、良い料理には「いいね」を押していただきますようお願いいたします。

※動画作成に当たり、東京サラヤ株式会社様からは「洗剤等」、三信化工株式会社様からは「食器」の提供をいただいております。感謝申し上げます。

 

3 委員会活動

本法人では、会員の全ての皆様が活動に参加できるよう、4委員会のうちのいずれかに所属していただいており、2021年度の主な活動についてお知らせします。

(1) 献立開発委員会

 「わくわく炊飯器クッキングレシピ集」38品を収載したレシピ集を個人会員と法人会員にお届けしました。このレシピ集は炊飯器を使用し、ハサミで料理、低予算等、制約の多い中作り上げたもので、本法人の財産とも言えるものです。このレシピ集を活用し、食育に役立てていただきたいと思います。 また、「おいらのキッチン」の献立作成を担当しました。

(2) 調理指導委員会

 コロナ禍のため、総会時に行う「指導者のための料理教室」を開催することは出来ませんでした。しかし、Zoom会議を重ね、料理教室の振り返りのためのクイズ形式の指導資料を作成し、「わくわく炊飯器クッキング」開催地において活用していただいています。

(3) 国際委員会

 コロナ禍のため、学校給食関係者の海外派遣も海外からの受け入れも出来ませんでしたが、タイの給食事情を調査しました。

(4) 研究活動委員会

 令和3年度に料理教室に参加し、アンケートに回答していただいた子ども118名分の集計を行いました。主な集計結果は次のとおりです。

・料理教室に参加したことで「お米のとぎ方を知ることができた」;96%以上

・今後「ご飯を一人で炊ける」;約67%

・「今日の料理をお家の人に作ってあげたい」;約70%

 

4 食育を研究する団体への支援事業

本年度は、申請のあった3団体に助成をしました。事業報告(要約)は、次のとおりです。

(1) 全国栄養教諭指導主事会

 都道府県及び政令市等教育委員会に勤務する栄養教諭等の指導主事は学校給食及び栄養教諭等を指導する職にあり、その指導力の向上と全国的な課題を共有することは極めて重要です。そのため、学校給食や食育の現代的課題について、Zoomによる研修会及び情報交換会を年に2回行いました。

(2) 学校給食・食育研究会

 栄養教諭等養成大学に勤務する教員及び栄養教諭等の会委員が「学校給食における衛生管理手法と食中毒発生の減少との関連性及びその有効性の検証」について第68回日本栄養改善学会において発表(コロナ禍のため誌上開催)を行うとともに、食育学会に論文投稿を行いました。また、「各都道府県等における教員に対する研修の実施状況や食育の達成状況と評価」について調査し、研修機会の有無と食育推進との関連性について検証を行い、第9回日本食育学会学術大会、第68回日本栄養改善学会において誌上発表。「学校給食における食物アレルギー対応の現状と課題」「特別支援学校における二次調理に関するデーター収集」等の調査研究や学会発表のための分析を行いました。

(3) 十文字学園女子大学

 「子どもの健康な成長を育むためには~食と農からみた菌との共存~」という講話とワークショップを開催しました。オンライン形式を取り入れたため、初めて全国から参加者を募ることができました。

 

 以上、2021年度の活動状況を報告させていただきました。

 本会は、会員の会費の他、趣旨に賛同いただいた学校給食関係企業の協賛金によって運営しております。よって、料理教室については、申請のあった個人または団体、食育を研究する団体への助成についてはホームページで公募し、法人内に設置した「選定委員会」において審査・選定するなど透明性に努めています。

 2022年度も引き続き、学校給食関係者への応援と児童生徒への食育を推進してまいりたいと存じますので、ご支援ご協力をお願いいたします。